先日、自動車で信号待ちをしていると、下校途中の小学生10人程が目の前の横断歩道を渡っていきました。2年生くらいでしょうか。小さな背中に背負っているランドセルにふと目をやると、筆者が小学生の頃とは異なる光景が広がっていました。
(SATOMI)
人気の色は?
かつてランドセルの色は、「男の子は黒、女の子は赤」が一般的。「好きな色」や「好きなデザイン」で選ぶというよりも、性別によって色が決まっていたり、6年間使うことができる丈夫さといった機能面が優先されていたように思います。
一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会は、2018年から小学校に進学する児童のいる20〜69歳の男女のうち、ランドセルを新しく購入した方を対象に「ランドセル購入に関する調査」を実施、結果を公表しています。
この調査では、男女別に購入の多かった色のランキングが発表されていますが、男児のランキングでは、2018年の調査開始から4年間で上位5色の順位に変動はなく「黒」が圧倒的に人気。いずれの年も60%を超える割合となっています。
※ 横スクロールで5位までご覧いただけます。
一方、女児のランキングは対照的。各色の割合にバラつきがあり、順位も変動しています。
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2021年の1位は「ラベンダー」。
同アンケートでは、購入したランドセルの検討開始時期についても調査をされていますが、2021年度の調査結果では、入学前年の4月(なんと入学式の1年前!)が最も多く、それより4か月も早い12月に検討を始めるという回答が2番目に多いという結果でした。
つまり、ランドセルを検討しはじめる時期の子どもたちはまだ4〜5歳ということになるわけですが、「ラベンダー」「キャメル」「ダークブラウン」といった、色名だけみると大人が好みそうな色を選んでいるというのも、とても興味深い結果です。
筆者が出会った冒頭の小学生10人のランドセルの色は、黒:4人、赤:2人、ピンク:1人、ラベンダー:1人、キャメル:2人という内訳。まさに近年のランドセル市場を象徴するような光景でした。
高まる色彩(カラー)の価値
また、購入した商品の決定理由についても調査が行われています。(複数回答)
興味深いのは、「丈夫で壊れにくそう」「軽い」「フィット感がある」といった機能面ではなく、「好きな色」「デザイン」といった情緒面が決定理由の1・2位を占めているということ。しかも、「好きな色」という回答の割合はこの4年間で増加傾向にあるようです。
ところで、このようにカラフルなランドセルが登場したのは、いつ頃のことでしょうか。
流通大手のイオンは、2001年に24色のカラーバリエーションのランドセルを発売しました。それまでの主流は「赤」「黒」のランドセルで、それ以外の色はオーダーメイドでつくられてはいたものの、店頭で誰でも選べる状態で販売されたのは業界初だったそうです。
以降、各メーカーともにカラーバリエーション豊富なランドセルを発売。今では、バイカラーのものや、デザインをカスタマイズできるものまで登場。豊富なカラーバリエーションの中から好きな色を選べるということが、ランドセル購入を決める際の一つの価値になっています。
新しい色の選び方
老舗ランドセルメーカーの株式会社土屋鞄製造所は、性別の枠にとらわれない色選びの新しいかたちを提案しています。色にこだわった新シリーズの商品は、男の子が赤を選んだり、女の子が黒を選んだり、自由な選択ができるようベーシックなカラーラインナップで、従来のモデルよりもシンプルなデザインの商品です。
さらに同社が行なった調査では、ランドセルの色について「性別による固定観念をなくしたほうがいいと思う」と考える人の割合は約8割を超えたそう。SDGs「17の目標」の一つである「ジェンダー平等(Gender equality)」の意識が浸透していることを反映した結果のように感じられます。
一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会の調査も、現在は性別ごとのランキングですが、近い将来“ジェンダーレス”なランキングになるかもしれませんね。
参考サイト
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